13thKansaiQueerFilmFestival2019
『パパのやり方』作品レビュー

ロスカム監督へ

邦題:パパのやり方
英題:Paternal Rites
監督:ジュールズ ロスカム Jules Rosskam
   82分|2018年|米国|英語
web:https://www.paternalritesfilm.com/

はじめまして。ヤカビユウコです。
映画紹介を依頼され光栄に思っています。関西クィア映画祭でロスカム監督の作品はずっと見せていただいていたので、とてもうれしかったです。
きっと、監督ご自身もそうではないかと思うのですが、この20年ほどは、私の回復の激動期だったため、作品に触れた時期で感じ方は大きく違います。

今回、『Paternal Rites』の映画紹介を担当しましたが、他の作品の再見も楽しみにしています。

事実を見つめること、自分の混乱を認めること、どれほどつらかっただろう、と思いました。事実そのものについての意見や感想は伝えません。ジャッジしたり評価したりすることはしたくないし、それにつながるすべてをしないためです。
ただ、観ました、と伝えます。

映画でたどり着いた終着点であり出発点から見える景色が、多くのサバイバーに届くと思います。
親密圏における被害の深刻さとリアリティを描いてもらえたと思います。

マララさんがノーベル平和賞を取り、#Metooムーヴメントが勢いを持つ今、性被害の本質を訴えるサバイバーたちの数々の努力が実を結んでいこうとしているのを感じます。
けれど、一方で、サバイバーが実名や立場を明らかにする告発のリスクに危機感も感じます。

私は15年前に自助グループを始めました。当初は自分が救われたい一心でしたが、グループでなかまたちとミーティングを重ねて、自分のことよりなかまたちのことを考えるようになり、自立していくことにつながりました。

映画の中で、過程を共にするパートナーとの時間に私も居合わせたことは、同じミーティングに居たようです。忘れません。

クローズドの自助グループには、サバイバーが自分のペースで回復していける利点があり、ゆるやかな変化を許される包容力があります。
どんなに支援者や行政が救援センターを整備しても、自助グループの立ち上げは続いています。それは、サバイバーが求めている真実の回復が「与えられるもの」ではないからだと思います。

この映画も、真実の回復を願う多くのサバイバーに届くことと思います。
「みんなの」物語を作品にしてくださったことに深く感謝します。

2019年4月

ヤカビユウコ



ヤカビユウコ



『パパのやり方』作品レビュー


過去のトラウマが、家父長制社会で生きるトランス男性としてロスカムの人生に、どのような影響を及ぼしたのか?
内野クリスタル


ロスカム作品レビュー一覧


パパのやり方
►9/23(月・休) 10:10 すてっぷ(上映後に、シネマカフェあり)
►10/19(土) 15:25 西部講堂


※日本語字幕をオンにしてごらん下さい。
  • パパのやり方スチール
  • パパのやり方スチール
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