13thKansaiQueerFilmFestival2019

『パパのやり方』作品レビュー

屋嘉比優子

邦題:パパのやり方
英題:Paternal Rites
監督:ジュールズ ロスカム Jules Rosskam
   82分|2018年|米国|英語
web:https://www.paternalritesfilm.com/

あのときの、恐怖、無力感、孤立、怒り、混乱。
世界が色を失くしたり、ノイズばかりが頭に響いたり、身体がバラバラになってしまうような、あの感覚。
性暴力サバイバーのセルフドキュメンタリー作品には共通した要素がある。あのときの、あの「感覚」を伝えたい。目撃者はなく、自分に刻まれた記憶だけで、誰にも理解はされないことを伝えようとする青い炎が見える。

ミーティングで出会ったなかまたちの語りが聴こえてくる。
これは、ロスカム監督自身の物語であると同時になかまたちの物語。
「そんなことが起きるわけない」と思うあなたには届かないだろうけど、サバイバーたちはこうやって足跡を残していく。

この映画は観る者を混乱させる。愛情、信頼、復讐、の向かう先が、混乱している様子がそのまま描かれている。

誰から被害を受けたのか。
誰に怒りを感じるのか。
誰に責任を問うのか。
混乱し、葛藤する過程を、観客は共にすることになる。

その過程を、よく「サバイバーは嘘をつく」と言われる。
そう言い放てるあなたにはサバイバーの見ている風景など永遠にわからないだろう。

人の心には幾重にも層があり、それは、あまりに複雑に入り組んでいる。
降り積もる真っ白な雪はただただ美しいけれど、重なりできた硬い氷の刃は、内側からサバイバー自身を切り刻んでいく。

答えがほしい、答えが、ほしい。
その答えを知るのはとてもこわい、のに。
もしかしたら、答えがないことなのかもしれないのに。

真正面から手紙を読むジュールズの表情に、私たちは逃げ出したくなる。
もう闘わないで、と祈る気持ちと勝ち抜いてほしいと思う気持ちが錯綜する。

たどり着いた、出発点でもある終着点から見える景色が、多くのサバイバーに届く。
いつか、雪はとけて春になる。




屋嘉比優子



『パパのやり方』作品レビュー


過去のトラウマが、家父長制社会で生きるトランス男性としてロスカムの人生に、どのような影響を及ぼしたのか?
内野クリスタル


ロスカム作品レビュー一覧


パパのやり方
►9/23(月・休) 10:10 すてっぷ(上映後に、シネマカフェあり)
►10/19(土) 15:25 西部講堂


※日本語字幕をオンにしてごらん下さい。
  • パパのやり方スチール
  • パパのやり方スチール
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