17thKansaiQueerFilmFestival2025

『流れゆく 遠い道』大阪会場での質疑応答について
実行委員1人1人からのメッセージ 森澤


『流れゆく 遠い道』大阪会場での質疑応答についての、実行委員1人1人からのメッセージを掲載します。


森澤


流れゆく遠い道 質疑応答の発言に対してのレスポンス

フツウに日本で育って、日本の学校に行って、大人になると、なんとなく暗黙の了解となっていることがあります。自分たちが現在持つ富や権力は、当然日本の全ての人が持っている。「ちゃんと」やってれば、その富や権力が保証されるくらい、日本は平和で公平になった。だから、昔は違ったかもしれないけれど、みんな頑張れば同じ幸福を達成できる。そういうことを、家族や学校で学ぶかもしれません。でも、周りを見渡してみると、これは錯覚かもしれない、と気づくきっかけがあります。

だれもが、違う段階でこの「公平の錯覚」を脱ぐ過程にあると思います。自分は子供時代、アメリカのマジョリティ白人の町に住んで内面化した人種差別的考え方を、中学生になってから解体し始めました。きっかけは、ブログサイトの tumblr で広がっていた社会運動の意識です。ソーシャルジャスティス、人種差別、抑圧、帝国主義の構造、を学ぶことができました。人種差別を体験したのは、自分が劣っているからじゃないんだ、帝国主義は、今でも生きているんだ、と知りました。社会に蔓延する権力構造、その物質的影響、そして自分自身の持つ周縁化されたアイデンティティだけでなく、自分の持つ特権をも知りました。そして、これからも学んでいきます。

クィアだと自認するときも、錯覚にヒビが入ります。新しいアイデンティティを得たり、生まれ変わった気持ちになる人もいる。でも、同時にフツウから外れることで今までの社会への属性を失ったり、職に困る人もいる。孤独になる。結婚とかお金とか、物質的な生きづらさ、精神的な辛さが出てくる。クィアとしては、マジョリティ社会に抑圧されることを肌でわかっています。そして自分たちの愛や文化は存在する権利があることを知っているから、抵抗すること、それはクィア・アイデンティティを持つことの一部だと思います。そして抑圧者は、抑圧の対象を選びません。だからこそ、自分たちの解放のために、他に周縁化されたコミュニティと連帯し抵抗していこう。これも、関西クィア映画祭の「日本人ファーストをやめるために」特集の一つのメッセージだったと思います。

これからも学んでいきます、と言いましたが、在日コリアン・朝鮮人が、日本の帝国主義的取り組みによって現代日本にいること、そして法的にも文化的にも抑圧されていることは、恥ずかしながら高校になってから知り始めました。そして今もまだ知らないこともたくさんあります。

知らないこともたくさんですが、今、日本人と在日コリアン・在日朝鮮人が、質問者さんが想定しているような「フラット」に、「楽しみを持ちつつ」共存できる社会は、日本人の妄想だと思います。もうすでに、平等な社会が実現できている、という妄想です。『流れゆく 遠い道』のウヒさんの詩が表現するように、日本が犯した残虐行為とそれの残した影響は、私たちの在日コリアン・朝鮮人の仲間の人生における物質的状況に、まだ生きているのです。そして、社会的格差は残念ながら、まだあります。その背景で、日本人が「楽しくやろうよ」「好きになれない」というのは、在日朝鮮人の体験を踏みにじり、日本が犯した暴力を押し広げることにすぎません。

私とあなたは、どうやってフツウの日本人という特権を持って生まれたのでしょうか。なにか前世で良いこと・悪いことをしたからでしょうか。理由は特にないかもしれません。どうであれ、今回、私たちは偶然日本人として、この多様で、でも不公平な社会の中に生まれてきました。からには、日本が残酷なことを犯してきた対象の在日コリアン、在日朝鮮人の方に、抑圧者である私たちは、謝りの気持ちをもつこと、そして自分たちが一生かけて内面化してきた差別、帝国主義的な考え方を、解体することは第一歩です。歴史があるからには、現在の我々はそれを認識し、自分ごととすることで、初めて(そしてそれでも日本人の都合によって共存を強いる権利はありませんが)抑圧・被抑圧の関係をとりこわし、人間として向かい合い始めることができるのだと思います。これは自分たちの責任なのです。

なので、フツウの日本人からフツウの日本人へ、これからも学んでいきましょう。



『流れゆく 遠い道』大阪会場での質疑応答 当日の発言(文字起こし)

実行委員1人1人からのメッセージ

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