パパのやり方
►9/24(月・休) 10:10 すてっぷ
►10/21(日) 16:40 西部講堂
いつも疎遠な父。大好きな母。噛み合わない兄。そして祖父。
両親の旅路を辿るなか、過去の暴力や痛みと向きあうロスカムが、対話の積み重ねを通じて「家族」を見出していく。映し出されるホームビデオや美しい自然の風景、感情をかたどったようなアニメーション。パッチワークのようにつなぎ合わせたロスカムの記憶に誘われ、私たちもまた、自分にとっての家族を見つめ直す。
長年KQFFが推してきたFTM監督の最新作はセルフドキュメンタリー!
邦題:パパのやり方
英題:Paternal Rites
監督:ジュールズ ロスカム Jules Rosskam
82分|2018年|米国|英語
web:https://www.paternalritesfilm.com/
監督からのメッセージ
「トラウマ」を題材にした映画を作ろう、と最初から思っていたわけではない。当初は、1974年の両親のアメリカ横断のロードトリップを辿ることで、大陸だけでなく、時空を横断したい、という意図があり、4年前に『パパのやり方』を撮り始めた。そうやって、両親を、今までとは違う、新しい見方で知れたら、と思っていた。けれども、結果的に、映画制作を通して、自分の人生の暗い側面を掘り起こすことになってしまった。掘り起こしたからには、その中に埋もれて、隅から隅まで掘り返して、向き合った後にちゃんと元の場所にしまえるようにしたかった。作品の制作を通して、物事と向き合う、というのが私のやり方だ。だから、この映画は、自分の他の作品もそうであるように、知恵や人との繋がりを追求してきた私の軌跡の証拠であると言える。
『パパのやり方』では、多くの点において、私が家族の中の男性たちとどのように付き合ってきたか、ということを描いている。トランス男性である自分にとって、「男らしさ」は近いものであり、かつ遠いものだ。そんなユニークな立ち位置にいるからこそ、「男らしさ」というものを、解きほぐし、振り返ることができる。「男らしさ」を自分のものにする、ということについて、批判的に考えることができるのだ。
『パパのやり方』は、私個人の家族の話であると同時に、すべての家族の話である。家族のメンバーの一人ひとりが如何にして、家族を維持しているのか——そんなことを描いている。それだけでなく、親が、私たちを守り、知り、向き合おうとした結果、失敗することが、如何にして多くの人にとって、トラウマになっているか、ということも描いている。加えて、「家族という制度」の中で、私たちは初めて、ジェンダーの権力構造に出会い、強要される、ということも、この映画を通して映し出せていたら嬉しい。職場における女性に対する暴力が横行している文化だからこそ、家族制度も、その問題の中心にあると、ということを忘れてはならない。家族制度こそが、家父長制社会の土台であるのだ。
『パパのやり方』は、提案でもある——トラウマを乗り越えて、繋がりに向かうためには、痛みのおおもとに立ち戻ることが良いのかもしれない。対話と批判的な自己認識を通して、傷を癒すセラピーのような過程の表れだ。
ジュールズ・ロスカム監督作品
今年の映画祭では、ジュールズ・ロスカム監督の作品が3作品、上映されます。
- パパのやり方(82分/2018年)
- 思いっきり泣くこと(13分/2018年)
- トランス物語に抗して(61分/2009年)
♦日本語の作品を含め、『サイン』以外の全ての上映作品に日本語字幕が付きます。
♦ステージ上での全てのトーク・講演に、手話通訳がつく予定です。
♦Many films will be screened with English subtitles. Please visit [Subtitle info] for more information.