~ 歴史をつくる これからも わたしたちも ~
2016年で第10回を記念する関西クィア映画祭のプレ企画①「「わたし」からみた、日本のクィア・セクマイ運動の20年」では、PROUDの代表であり、香川レインボー映画祭主宰である藤田博美さんと、関西を拠点に「バイセクシュアル」の立場から活動してきたひびのまことさんをゲストに迎え、それぞれの視点から日本のクィア・セクマイ運動の20年についてお話していただきました。
藤田さんのお話では、ご自身の生育歴や活動歴についてお話いただきました。お話中は、参加者が自由に質問し、和気あいあいと進みました。日本国内でのゲイ・ムーブメントやフェミニズムの興隆など、90年代半ばという大きな潮流の中で、藤田さんはコミュニティと繋がり、コミュニティを創りだされてきました。美術館の来場者ノートや商業誌を介した交流など、ネットが主流になる以前のネットワーキング方法に、参加者からも「エ~!」という驚きの声があがっていました。
また、まだLGBTという言葉が主流化する前の団体のありかたや、人々の繋がり方にも焦点が当てられました。地方である香川で「女を愛する女」の団体「ハートショット」の発足した2年後には、既婚者、バイセクシュアル、ゲイ、トランスなど様々な立場の参加者がいたため、ミックスの場である「PROUD in 香川」を立ち上げられたそうです。都心部のゲイバーがレディースデーを設けてくれるなど、アイデンティティラベルを超えたゆるやかな連帯についても語られました。
00年代では同性パートナーの法的保障についての取り組みが盛り上がりを見せましたが、もともと友達づくりや茶話会などのネットワーキングを中心とする目的で発足したPROUDが、勉強会や講演会などの啓蒙活動に取り組もうとすると、離れていく人や、交流会にだけ参加する人もいたようです。地方で外向きな活動にシフトすると、アウティングが心配では?という参加者からの質問には、「当時は世間も注目しておらず相当アンダーグラウンドな活動だったので、見たい人しか見ないような状況があった」と答えられ、現在との状況の違いが確認されました。
香川で行われていたインディー系の上映会との繋がりもあった藤田さんが立ち上げた香川レインボー映画祭ですが、映画祭という取り組みならではの苦難について共有がなされました。ゴール設定が難しいこと、リピーター率が少ないこと、上映する映画の方向性、財政基盤、当事者・非当事者の壁、ニーズの違い、活動仲間との人間関係などなど… 同じく映画祭を主催するひびのさんと、悩みを共有されていました。
ひびのさんのお話では、主に東京のパレードと関西のパレードの差異に焦点を当てたお話がなされました。
関西の団体2つを例にあげ、当時はゲイやレズビアンの定義が今よりゆるやかだった、または、様々な意見が混在していたものの、積極的に排他的定義がなされなかったことにより、最初からその場にトランスやインターセックス、「バイ」など、様々な人が集まっていたというお話がありました。そのような場づくりを目指すためには、その場が「同性愛者というアイデンティティ」でのあつまりではなく「典型的な性規範に反対」するあつまりであること、つまり、問題の切り口の選び方の重要さを指摘されました。その文脈を踏まえ、ひびのさんはゲイ男性による運動の私物化を「ゲイ男性中心主義」として批判されています。歴代の代表のほぼ全員がシスジェンダーのゲイ男性である東京のパレードと、多様な表象が見られる関西のパレードを比べ、東京を進歩的だと見る運動観に警笛を鳴らされました。運動内のトイレ問題、「ゲイ・レズビアン」「セクシュアルマイノリティ―」「レインボー」「LGBT」「クィア」などの名称問題、ビラ配り問題についても言及されました。ビラ配り問題では、関西のパレードが民主的であるために話し合いや打開策が練られたことが確認されました。
また、運動の中の女性差別についても語られ、以前の東京のパレードで実際に起こった暴力・「レズのくせに、何しやがるのか」など暴言事件についても説明されました。そこでは、伏見憲明さんなど東京の一部のゲイ活動家が、その事件以降も運動内に存在する女性差別や同性愛者中心主義を反省するどころか、「同性愛者だけで集まって何が悪いのか」「バイセクシュアルを排除したというのは不当な言いがかり」などと言い続けている状況も報告され、参加者の驚きを集めました。
質疑応答の際、会場からの質問は「同性同士で結婚できるの?」「取材は全国紙か地方紙、どちらが多いか?継続的に取材してくれる人はいるか?」「地方であるが故の困難は?」「トランスのことについてもう少し話して」などがありました。
プレ企画①では、幅広い年代層のおよそ20人にご来場いただきました。
アンケートでは
などの意見がありました(公開OKにチェックがあるもののみ抽出)。
3時間半もの企画でしたが、話は尽きませんでした。
たくさんのご参加、本当にありがとうございました!
(文責:まいと)
来場者数17名を迎え、盛会のうちに終了しました。夜遅くまで参加者同士の交流が見られ、開催できてよかったなと思います。ご来場いただいたみなさまにも、企画情報の拡散にご協力いただきましたみなさまにも、深く感謝申し上げます。
次回のプレ企画にも、みなさまお誘い合わせの上、ぜひともお越しください!(文責:りょう)
同性婚が話題になる中、わざわざ米国までLGBT運動を学びに行く動きもあります。欧米のクィア研究を学ぶ人も増えました。
性的少数者たちのコミュニティーや運動は、ここ日本でも20年以上前からありました。私たちはまず、私たちの足元で積み重ねられてきた取り組みが価値あるものであると認め、それらを学ぶことから始めたいと思います。
そしてもう一度、私たち自身の暮らしの中で感じ考えたことを言語化していくことから始めて、私たちのコミュニティーや運動、私たちのクィア研究をつくっていきたいと思います。