女子の中絶と、性同一性障害の手術とのリンクが、構造的にどういう問題を持つのか、わたしには分かりやすかったです。
また、女性の置かれている社会的な地位についての言及があることで、後の映画をより理解する手助けになったように感じます。
わたしは、自分自身の問題として「わたしが女子であること」をずっと考えています。
その視点から、「男子であること」という映画を観ました。
観る前にまず、「女子として育ったひと」「女子であることを望まれてきたひと」が、「男子であること」を語るということに強く惹かれました。
わたしが、自分を「女子として育てられ、女子であるこてを望まれた」存在でありながら「女子ではない」と感じ、しかし「男子である」とは感じたことがないからです。それがどういうことなのか、自分でも説明が出来ずもどかしく思っているので、自分のことを整理するヒントが得られそうに感じたのです。
ところで、この映画では、様々なひとたちが、様々な観点で、様々な論点で「男子であること」を語ります。わたしには、それは「何らかの性自認を持つこと」を語ることと同様に感じられました。しかし、「男子であること」は「女子であること」と社会的な意味が異なります。そこが、登場人物たちの論点を複雑にしていると思いました。
「男子である」なら、その社会的な意味を知った方がいいように、わたしには思えます。それがない中で男子であるなら、男子として批判を受けることは免れないことだと思います。例えば女子を劣った存在と評価し、社会から女子を排除することについてなど。
それはそれとして、女子の身体的特徴とされるものを除くことは、そういった女子の置かれる状況を引き受けずに逃げることなのでしょうか。わたしはそうは思いませんでした。男子であると感じるとき、女子であることは、すでに引き受ける引き受けないの問題ではないということだと、胸を平らにする手術を受ける人たちの発言を聞きながら思いました。女子ではない人たちに、それを引き受けよというのは的外れに思えます。男子として、女子の身体的なイメージや女子の置かれる状況についての責任を考えればいいのでは?と感じました。
また、トランスしていく人たちの置かれる状況が非常に厳しいということも別の問題としてあることをリアルな言葉として知れました。その問題は男性性を持つ女性にも、女性性を持つ男性にも、一部共通するところがありそうです。奇異な目で見られ、命が脅かされること、自認する性を生きるときに不利な立場におかれやすいということ等々。
他にも論点はありましたが、わたしにはこれくらいしか整理しきれませんでした。
個人的な関心に重点を置くと、わたしは、自分が「女子であること」を否定しながらも「女子であること」を捨てられないのだということに、この映画を観て気付きました。何故なら、わたしはあくまで「女子ではない」と感じているのであって、映画の登場人物たちのように、「男子である」とか「女子でも男子でもない」とか「女子でも男子でもある」とか「男性性を持つ女子である」とは感じないからです。
同時に、様々な自認を持つひとたちがそれぞれ自分の言葉で語るのを見て、“「女子であること」を捨てる”必要はないのだとも思いました。
そしてそれはわたしが“「女子であること」をやめられない”意味を考えるという課題に繋がりました。ちなみに今はまだ考え中で答えは出ていません。何となく「女子である」と感じる以上に「女子であること」に依存しているのかも…と考えていますが、言葉が適切ではない気もしています。
この映画は本当に多くの問題を提示していました。語られること一つ一つに、考えるべきことがあったと思います。
何回観ても新しい視点や気付きが得られる作品だと思いました。
わたし自身そうだったのですが、映画の情報量の多さに何をどう発言していいか戸惑っている人が多かったように感じます。
わたしも感想を発言もしましたが、混乱していて何をどう述べたか覚えていません…。
当事者であるという方が自分のことについて述べたり、初めてセクマイを扱った映画を観たという方が用語の解説を求めたり、と、立場により見方が異なっていて、それぞれ興味深いものでした。
もう少し雑談等してからの方が意見交換としては盛り上がったかもしれません。
希望者のみで近くの居酒屋に流れて、交流をしました。
食事をしながら、個人的な経験を語り合ったり、「男子であること」についての話をしたり、学校や授業におけるジェンダーやセクシュアリティの取り扱われ方について話したり、はたまた全然関係のない話をしたり、和気藹々とした雰囲気で楽しい時間を過ごしました。
若い世代が多く、セクシュアリティについてやジェンダーについて気構えずに話せるような交流の場が求められていることを強く感じました。
やっぱり個人の在り方はさまざまで、それぞれ違う感じ方をし、異なる問題意識を持っていることを実感しました。
とにかくいろんな話をして、聞けて、楽しかったです。
(By ちせ)
関西クィア映画祭 実行委員会
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