関西クィア映画祭の春の新歓ミニ企画
(京都レインボープライドパレードフェス2023協賛)
関西クィア映画祭は、日本で、最もたくさんのトランス映画を上映してきた映画祭です。「カワイソウな」「感動的な」存在としてトランスジェンダーを描くのではない、トランス当事者の目線からの、楽しめる味わい深い短編を5作品を、過去の上映作品の中から厳選しました。
また、長年「バイセクシュアル」として、そしてXジェンダーとして、「男女という制度」それ自体を問い続けてきた、当映画祭代表のひびのまことからは、問題提起を行います。
今回は、参加者どうしで顔を見ながら話せる、1人1人が自分の思いを口に出せる、そんな場を作りたいと思います。
ぜひご参加下さい。
日 時 2023年4月23日(日) 12:45開場 13:00開演
会 場 京都市東山いきいき市民活動センター
京阪「三条」/地下鉄東西線「三条京阪」 徒歩10分
http://higashiyamacds.main.jp/access
定 員 15名程度(席数が限られているため、ぜひ事前にご予約下さい。当日も空きがあれば参加できます)
参加費 500円 / 1000円 / 2000円(裁量価格制)
日本国内でも、経済的な格差が拡大しています。これは社会構造に主な原因があり、個人の努力ではどうにもならない問題があります。
私たち関西クィア映画祭は、経済的理由で企画に参加できなくなる人を減らすために、段階的な価格設定(裁量価格制)をしています。
各自の状況に応じて、自身で価格を選んでください。
経済的に余裕のある人はそれに見合った価格で購入することで、コミュニティーの他の仲間が、企画に参加できるようになります。
証明書の提示などは不要です。「みんな」で助け合う文化を、私たちのクィア・コミュニティーに作っていきましょう。
以下のメールフォームに事前にご記入いただくことで、席を優先的に確保できます。席数が限られているため、ぜひ事前にご予約下さい。
(当日も空きがあれば参加できます。)
[ 参加予約フォーム ]
手話通訳を希望される方は、お手数をおかけしますが、 4月15日(土)の23時59分までに、[ 参加予約フォーム ] からお申し込み下さい。フォームに、手話通訳が必要かどうかをチェックする欄があります。
12:45 開場
13:00 開演・挨拶
【第1部】映画
短編5作品の上映(54分)
感想を語り合う会(30分)
(※映画上映は簡易な方法によります)
(休憩)
【第2部】問題提起
『女?それとも男?』を問い続けて(ひびの まこと)(50分)
質疑応答と意見交換(30分)
17:00 退出完了
終了後に食事会/飲み会(任意参加)
「ウィリーのドライブスルー」は、トランス男性のための米国初のドライブスルー外科。そこでは、外科手術やホルモン投与、そして社会的な又は性的な困惑を提供している。
典型的なトランス映画はドキュメンタリーで、トランス女性に焦点を合わせ、トランス当事者ではない監督に撮影され、心温まる物語を提供する。しかし映画『ドライブスルー』は違います。楽しく明るくアニメ化され、苦々しくも現実的な、トランス男性の経験の風刺が描かれている。
KQFF2006
(Drive Thru/監督Jed Rosenthal Bell/4分/2005年/米国/英語/日本語字幕/アニメ)
私たちは、日常のさまざまな場面で「女・男」のどちらかを選択させられ、勝手にふりわけられる。そのたびに、苦痛や困難を強いられたり、不便に感じたりする人たちがいる。この映画では、そのように困っている人がいたら、ジェンダーバスターズがすぐに駆けつけて問題を解決してくれる。その時、性別で分けることが本当に必要なのかも問う。
そして、ジェンダーバスターズはいつも、「英雄は私たちのなかにいる」と言って去っていく。そう、実は誰でもジェンダーバスターズになれるのだ。ジェンダーバスターズかっこいい!
KQFF2012 KQFF2016
(Genderbusters/監督Sam Berliner/6分/2010年/米国/英語/日本語字幕/コメディ)
台湾では、屋台や古い住宅にプロパンガスを届ける労働者を「送瓦斯的(Sòng wǎsī de)」と呼ぶ。決しておしゃれな仕事ではなく、大抵は、ぽっちゃりした男の人が運んでくるそうだ。でも、妖精さんのガス屋さんは違う!ハイヒールを履きこなし、キラキラのラメを携えて、セクシーに届けてくれる。密かにドラァグを夢見る幼いジョジョは、彼女のガスの魔法にかかって、果たしてどうなるのか!?自分らしく生きたいけど、ちょっと自信のない、そんなあなたの背中を押してくれる、クィアなコメディ・ミュージカル。
KQFF2022
(Tank Fairy/監督Erich Rettstadt/10分/2021年/台湾・米国/中国語/日本語字幕/コメディ)
自分の生まれ育った山形で静かに暮らしたいトランス男性のケイと、東京で開放的な生活を望む“ガイジン”でクィアのパートナー、エリン。ケイが慣れ親しんだ地元の温泉を舞台に、二人の願いとアイデンティティの前に横たわる壁が明らかになる。男湯と女湯とを隔てる壁、そして露天風呂の豊かな風景が、いろんな意味で象徴的だ。
トランス男性役のケイは、トランス男性である門田千颯さんが、エリン役はジェンダーフルイドでクィア・ライター/ディレクターであるカイ・マリエラ(they/them)さんが演じている。
KQFF2021
(監督カイリア・スコット-グライムズ/17分/2020年/日本・カナダ/日本語/日本語字幕/ドラマ)
米国・ニューヨーク州の小さな町に住む、ノンバイナリー、トランスジェンダーを自認するミレニアル世代の9人が、自分のジェンダーのあり方と自分らしい生き方を語る短編作品。「LGBTQだ」「ノンバイナリーだ」と分かりやすくカテゴライズし、単純化したがる社会。そんな社会に対して、ノンバイナリーと自認していても、各自の性のあり方や体との向き合い方、髪型や服を通して自分を表現する方法も、そして興味関心も全く違う。そんな当たり前だけど、忘れがちなことを一人ひとりの語りを通して、今一度気づかせてくれる。
KQFF2022
(There's Beauty Here/監督Leah Waring Byck/17分/2021年/米国/英語/日本語字幕/ドキュメンタリー)
トランスジェンダーといっても、そのあり方は多様で、簡単にまとめられません。大雑把にみても、性別の二元主義自体を問わない立場の(バイナリーな)トランスジェンダーと、性別二元主義に同化しようとしない(ノンバイナリーな)トランスジェンダーとでは、言っていることが(一見)異なっているように感じることも多いでしょう。当事者間でも、激しい応酬が行われてきた歴史もあります。
最近になってトランスジェンダーについて考え始めた人は、ネット上の極端な攻撃や、最近目立つ発言こそが、トランスジェンダーに対する中心的な差別であると、勘違いしてしまうかもしれません(※注)。しかし実際には、トランスジェンダー差別は、構造的差別として、社会のあちらこちらに組み込まれています。そして、その差別があまりに広範囲で強力なために、どの側面から先に変えていくか、どの部分は諦めて、何を優先するかの「とりあえずの選択」の違いが、当事者同士の(本来は不必要な、そして不幸な)争いとして、現れてしまっています。
まず何より、私は「生物学的決定論」に反対します。ある人は「セックスはジェンダーだ」という言い方をしました。身体の特定の状態に対して、社会的に、過剰な/不必要な意味を付与し、人々にそれを強いることに、私は反対です。一人一人が、「生物学的な性別」による制限を受けることなく、自身の望む生き方を選べる社会を、私は望みます。
『女?それとも男?』という問いは、トランスジェンダーが話題になるはるか以前から、ずっと私たちを縛ってきました。スカートをはかない女子学生が大学の教室から追い出されたのは、ほんの一時代前のことでしかありません。性別によって生き方が制限される、そんな社会を変えてきた人たちの闘いの延長線上に、今のトランスジェンダーの権利のための闘いがあります。ぜひあなたも、この闘いに加わりましょう。
ひびの まこと
http://barairo.net/
関西クィア映画祭 代表
トランスクィアデモ京都 実行委員
(※注)「お茶大のトランス学生受け入れ表明以降に、トランス差別が激しくなった」という言い方をする人が増えてしまいましたが、それは、端的に事実に反します。その見方では、それ以前にはトランス差別が激しくなかったかのように、聞こえてしまいます。トランス差別は、社会構造の中に埋め込まれ、ずっとトランスの人たちを苦しめてきました。そしてそれへの社会的な抵抗も、どんなに短く見ても何十年というスパンで行われています。何十年にもわたって批判を受けてきた厳しいトランス差別と、それへの闘いの存在に、ほとんどの人が気がつかなかった/無視できていた、だけのことです。お茶大の件は「沢山あるトランス差別のうちの一つが撤廃された」という事に過ぎず、その一つの前進に対してさえ、これほどの大きな反動(バックラッシュ)が起きる社会であることが分かる、事例です。
ですので、「お茶大以降」ばかりに焦点を当てる認識は、構造的差別としてのトランス差別を見逃し、差別の深刻さとその差別と闘ってきた長年の当事者の闘いを不可視化する、不適切な認識だと私は思います。
トランスジェンダーについて、これまでは、本当に関心のある人たちが、当事者と実際に出会って語り合い、時間をかけて考えようとすることが多かった。しかし最近は、国会でも話題になる状況に至り、「フツーの人々」が自分の生活実感から(それはつまり、マジョリティー目線から)発言することも増えている。トランスジェンダーのことを理解していない、不適切な発言が急に増えたように感じるのは、このためだ。そしてこのことが、特に若いトランス当事者を傷つけている。
また、統一教会の支援を受けた極右保守系議員などが、性の多様性に反対する活動を活発に組織的に行ってきた事も、最近改めて明らかになっている。日本軍「慰安婦」問題を否定するだけでなく、「ジェンダーフリー」が過剰に攻撃されたり、日本社会の多数派が支持している「選択的夫婦別姓」さえ国会を通らないのは、こうした動きのせいだった。加えて、いま宗教右派によるトランスジェンダーへの攻撃が世界的に広がっている。こういった、金と権力を持った人たちによるトランスジェンダーへの攻撃が日本でも広がったのが、最近の特徴だ。こうした確信犯的で悪意のある攻撃が増えてしまったため、初めてトランスジェンダーの問う課題に触れた人が、間違ったり試行錯誤しながら理解を深めたり、当事者の間でも率直に意見交換することが、一層困難な状況になっている。
ただそもそも、これまで「フツーに」生きてきた人たちにとって、トランスジェンダーという考え方で何が問われているのか、簡単に分からない/理解できない事は、残念ながら当たり前だとも言える。シスジェンダー中心主義や、性別二元主義は、今の社会の隅々に埋め込まれており(生まれた最初から「男?女?」と聞かれ、それによって社会的な取り扱いが変わる)、その呪縛からの解放が簡単ではないのは、トランスジェンダーに限ったことではない。
だからこそ私たちは、無責任に言いたいことを言えるネットではなく、参加者どうしで顔を見ながら話せる、1人1人が自分の思いを口に出せる、そんな場にこだわりたい。「自分の言いたいことを言う」だけで終わるのではなく、人と話す中で自分自身の発言に責任を負うこと、相手からも応答があることを、思い出したい。傷つけたり傷つけられたりしながらも共にあることを、そんなやり方を改めて取り戻したい。
関西クィア映画祭の本祭は、多くの人に映画を届けることに重点を置いているのですが、ミニ企画はそれとは異なり、小規模で丁寧な場を目指します。
主 催 関西クィア映画祭 実行委員会
ウェブ https://kansai-qff.org/
メール info@kansai-qff.org
電 話 080-3820-2731(留守電にメッセージをお願いします)
F A X 06-7878-8882