趣旨


性に当たり前なんてないよ

あなたはどんな性別で暮らしていますか? 恋愛やセックスは好きですか? どんな恋愛やセックス、人との関わり方をしていますか? 「男らしさ」や「女らしさ」が期待されることに、しんどくなった経験はありませんか?

もう既に「男女という制度」の枠組みから出て、自分らしい性を生きている人たちが、沢山います。典型的であってもなくてもいい。変(=クィア/queer)でもいい。性のあり方は多様だ。私たちは生きていける!「クィア」を切り口に「性」をテーマにした映像作品を上映する関西クィア映画祭は、そんなメッセージがあふれる「みんなのお祭り」です。


ところで「クィア」ってなんですか?

英語で「奇妙な/変な」という意味で、性的にフツーでないとされる人への蔑称だった「クィア」。LGBT という言葉がフツーになった今だからこそ、私たちは敢えてこの言葉を使います。それは、LGBTにとどまらず、様々な性や生を肯定したいから。

「男女という制度」という枠組みの代わりに「LGBT」という枠組みを作って、安心したくないから。

規範に頼らずに一人一人が自分の性や生を選び決めていける、という希望があるから。

フェミニズムが当たり前の世の中をつくりたいから。

民族差別、障害者差別、セックスワーカー差別、貧困など、私たちの身の周りにある差別と権力の構造に向き合って変えていきたいから。

「共に生きる」ことは、難しくもあり、豊かなものでもある、と知っているから。


タイヘン×ヘンタイ

性別や恋愛のあり方、生き方は多様だ――私たちはそう思って集まります。しかし時を重ねると、私たち自身も他者のあり方に無知だったり、時には受け入れ難いことがある、と気がつきます。

例えば「LGBT」を掲げていてもゲイ男性ばかり目立つことは珍しくありません。在日朝鮮人のセクマイは、しばしば不可視化されます。

「少数派の中の少数派」を作ってしまうことや、時間も人手もお金も限られている中で優先順位をつけること、身近な差別・抑圧への無関心は、多数派社会だけの問題ではありません。

単純化した分かり易さやシングルイシュー主義にはご用心! 私たちの複雑さや自分の特権にも向き合い、本当に多様性を手に入れるのは、とても「タイヘン」なのです。

また最近は「LGBT」が流行りですが、私たちは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーといった簡単な言葉では表しきれない存在です。恋愛対象や自身の性別が、個人の人生の中で「変わる/変態する」ことだってあります。

さらに、大企業や行政の顔色をうかがい、多数派に「受け入れてもらう」ために行儀よくするのはゴメンです。「私たちはフツーの人だ」と言うだけではなく、「フツーって退屈」「もっとヘンになろう」とも言いたい。

【タイヘン×ヘンタイ】のキャッチコピー、「私たちは一人ひとり違う、という現実に向きあうんだ!」という心意気を表すには、ピッタリの言葉だと思いませんか?


ことばの説明

セクマイ
「セクシュアルマイノリティー」の略。性的マイノリティー。LGBTQや、そういった分類自体に馴染まない人を含む、広い意味の言葉。
フェミニズム
今の社会には「男女という制度」や「女性差別という社会構造」があるという事実認識を前提にして、性別に基づく差別や抑圧に反対するという考え方。
異性愛中心主義
異性愛を自明視し無意識のうちに優遇する社会と個人のあり方。
トランスジェンダー
出生時に振り分けられた性別とは異なる性別で生きようとする人。Xジェンダーや性同一性障害など、シスジェンダーではない多様な人々を幅広く含む言葉。
トランス男性/トランス女性
「男性」「女性」といっても様々で、女性として扱われたり女性として暮らした経験を持つ男性や、男性として扱われたり男性として暮らした経験を持つ女性もいる。そういった人たちの性別の移行に焦点を当てて「トランス男性」「トランス女性」と呼ばれることもあるが、こう自称する場合、理由は様々でひとくくりにできない。
Xジェンダー
性別二元論の枠組みから外れる立場、あるいは両性、中性、無性などの名乗り方。また、女/男のいずれかを選ばせられることに反対する考え方。英語の「non-binary」や「genderqueer」「gender nonconformity」に近い。
シスジェンダー/シス女性/シス男性
出生時に振り分けられた性別と同じ性別で生きようとする人/女性/男性。