トランスパパ
▼母は言った。「あなたのお父さんは、いま女性なの」。音信不通だった父に会いに行くことにしたマーレン。いろいろ気を回す「父」ソフィアと対照的に、マーレンは頑なな態度を崩さない。両者の間にことごとく流れる不協和音…。そんなふたりの「不協和音が溶解する瞬間」を探しながら本作を観るのが楽しい。ぎくしゃくした関係にハラハラする分、エンドロールにはじんわり心に残る何かがあるはず。(よりー)
上映日時
【大阪】 9/15(日) 17:00開演 (16:40開場)
【京都】 10/6(日) 14:00開演 (13:40開場)
作品情報
トランスパパ / Transpapa
監督:Sarah Judith Mettke
2012|ドイツ|90 min|日本初上映
音声:ドイツ語|字幕:英語、日本語
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トレーラー
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作品紹介
母とともに暮らすマーレンは、ごく普通の生活を送るティーンエイジャーの女の子。ある日、意を決して幼いころに失踪した父親の行方を聞いたところ、母は、耳を疑う衝撃的な一言を口にした。「あなたのお父さんは、いま女性なの」。いてもたってもいられなくなったマーレンは、気の置けない親友のアドバイスを受けて、母に小さな嘘をつき、‘ソフィア’に会いに行く。
数年ぶりに再会する年頃の娘を前に、どうにも調子が狂ってバツの悪さ全開のソフィアがなんとも愛らしい。ソフィアという名前の由来を話せば、「へぇ」と気のない返事をされ、「お前は昔これが好きだったね」と問えば、そうでもないような素振りを見せられ、「紅茶とコーヒー、どっちがいい?」と聞けば、ジュースがいいとそっぽを向かれ、嗚呼、何をやっても空回り。他方、マーレンも、一見冷静にソフィアの様子をうかがっているように見えて、トイレで一人泣きじゃくったり、ソフィアが外出している間に家中を探索したりと、ポーカーフェイスとは裏腹になかなか混乱している模様。父親の面影を求めるマーレンに、あなたの父親はもういないと言い放つソフィアは、パパでもママでもない自分を‘Umma’と呼んだらいいと提案するが、当然、マーレンはこれを一蹴。どこまでいっても修復されそうにない二人の関係は、観ているこちらに一種の不安すら抱かせる。
しかし、ソフィアの内なる母性がなせる業か、マーレンの驚愕の順応力のおかげか、二人の間に次第に女性特有のあうんの呼吸というか、連帯感のようなものも見え隠れし始める。そのウィットに富んだやり取りに、ニヤリとせずにはいられない。
自分の生き方を貫きながら、娘への愛情を精いっぱいに表現し、伝えようとする親と、違和感を感じながらもそれを受け止めようとする娘の間に生まれた、不思議な絆。この映画を観終わったあとの余韻は、きっと清々しいものになっているに違いない。
あなたの親が、大切な人が、数年間ののち、異なる性になっていたらどうしますか?もしあなたが自分の性に疑問を抱いて、自分らしく生きようと決意したら、どうやってそれを大切な人に伝え、接していきますか?
生きていれば実は誰にでも起こり得る出来事への疑問に対する答えとして、一つのカタチをなしたこの映画。ぜひぜひ、様々な問題意識や興味をもって、ご覧ください♪