関西クィア映画祭2010
3×FTM

3人のFtMトランスジェンダー、ジョンウ、ムジ、ミョンジン。「3×FTM」は「お母さんのおなかにいたときから男だったし、男として見られねばならず、男にならねばならなかった」という3人の生きざまの中に深く入り込んだ長編ドキュメンタリー作品。

「生まれたときから男だった」というジョンウは、暑い夏が来る前に夏用ベストを買いに市場に行く。焼けつくような日差しのなかでオートバイに乗る仕事をせねばならない彼にとって、胸を押さえつける布の暑さを和らげてくれるベストは、夏の必需品である。

男同士の友情を大切に思うタフガイ・ムジは、長い間望んでいた胸の切除手術を終え、あふれる喜びを隠しておけない。韓国クィア文化祭に友人と共に参加した彼は、生涯初めて上半身を裸にして男性としての胸を堂々と見せ、自由を満喫する。また手術は、自由だけではなくFtMアイデンティティーの混乱ももたらした。男子の体に近づけば近づくほど、FtMアイデンティティーは薄らいでいく。

「自分らしい姿で生きるために」性別変更をおこなったミョンジン。住民登録番号の下一桁の最初の数字1を「2」から「1」に変え、法的に「男子」との認定を受けたが、大韓民国男児として生きることは彼が想像していたのとはかけ離れていた。女子中学、女子高という履歴のせいで、通っていた会社からは首を切られ、軍隊の身体検査では困った状況になるなど、一筋縄ではいかないことが多いが、かといって「もうイヤだ」と投げ出す彼ではない。

3×FTMは、トランスジェンダーの多様性の物語でもある。3人はそれぞれ、同じだけど違いもある経験や思いを語っている。

社会の偏見の中で大変さもあるけれど、「本当の自分」として生きていくことができて幸せだという3人の青年は、いま、ドキュメンタリーをつうじて友人や家族、より多くの大衆に、ワクワクな気分に満ちた手を差し伸べている。

キムイルラン監督
1972年生まれ。「PINK:性的マイノリティー文化のためのコレクティブ」で働き、「Mamasang: Remember Me This Way(2005)」で助監督。「3xFTM」は彼女の2作目。
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